お伊勢参りですが…(4)

最終回をまだ書いていなかったな。携帯を初期化したおかげで写真がなくなってしまった。もっとも今回天候や状況もあったのでろくな写真を撮っていない。

二日目を迎えた伊勢旅行。この日はどう考えてもとんだ一日になることが明白だった。予想されていた台風襲来の日である。そして昨日から見ている天気の情報では「伊勢湾台風」に匹敵するという文字まで飛び込んできた。ルートもそのような感じらしく、これが現実になったらと思うともう不安しかない。

前日の疲れもあってゆっくり目に寝たがまだ寝足りない気分。カーテンを開けたら外は相変わらずの大雨。冴えない一日の始まりだ。朝食をとってこの日のプランを相談する。
予定では猿田彦神社に行き、その後内宮、おかげ横丁と回って、宇治山田からしまかぜで帰ることになっていた。早めに帰りたい気分がこの時からあってその方向にすることを話してみたものの、プランの都合で列車の変更の自由が利かずせっかくきたので回りたいということもあって、宿を早めに出たこと以外は予定どおり決行することになった。今となっては、そこで無理してでも帰っておくという選択肢も有りだったと思う。が、その渦中にいる時というのは人間は得てして場の空気に少なからず飲まれるので、冷静な判断はなかなか下せない。ある意味そのことをまた思い知らされたような気がする。

送迎バスに再び揺られてまずは鳥羽駅へ。バスを降りるともうどしゃぶりだ。
近鉄鳥羽線の普通電車で五十鈴川へ。そこからバスに乗って内宮方面へ向かうが手前で降りて、まずは猿田彦神社へ。昨日の蛙のところでも出てきたな。

しかしもう最初から雨が酷過ぎて、びしょびしょだ。この後、内宮にも向かったわけだがずっとそんな展開。
その時はその時だったが、今からして思えば常軌を逸しているといっても過言ではなかった。
四人で出かけたもののちょっと割れ始めの空気、いつしか、私と、よく一緒に旅をしている友人の二人だけは、先をゆく二人の後方に距離を置いて歩いている。この時点で少し割れかけた関係性になっているところもある点、はたから見れば失敗も同然な感じだ。

参拝後、おかげ横丁の食事処に入る。名物の松坂牛が供されるお店で牛肉コロッケを食べる。つかの間の休息といった感じで美味かった。しかし体もカバンも靴の中もビショビショでタオルもすっかり水を吸ってしまった。
ここまできた時点で一応の目的はほぼ終えており、あとはお土産だけ買って帰ってもよかった。しかし、一同はまだおかげ横丁を懲りずに、うろうろしようとする。それにさっき内宮の時もそうだったが五十鈴川が増水しており半端な状況ではない。これはもうここで打ち切って早く帰った方がいい。

ということでまだ予定列車まで時間はあったが、内宮前からバスに乗って宇治山田駅へ向かった。しかしその車中で恐れていたアナウンスが耳に入ってしまう。
帰路で乗ることになる近鉄名古屋線で、一部区間運転見合せの情報が入ってしまったのだ。原因は列車のパンタグラフ破損ということで、この時点では人災であろうことが考えられた。しかしなんといってもこの天候、何があってもおかしくなく、このまま天候の悪化で遅れがひどくなったり運休に追い込まれる可能性もあった。ともあれ、まずは駅に行こう。もしかしたらなんとか復旧するかもしれない。

宇治山田駅に到着した。列車は運休しており広い待合所は足止めされた乗客が集まっていた。とりあえず状況確認と、できることを考えながら過ごす。止まっていたのは名古屋線だけで大阪線は動いていたので、やろうと思えば難波や京都方面に出てそこから新幹線で帰ることも可能で、その選択肢も頭にはあった。ただ、時間がまだ早かったことと、名古屋での新幹線が夜遅い時刻で予約されていたため、名古屋線が復旧すればまだ帰れる可能性があった。しかし、いつまでたっても復旧のめどが立たないという情報が流れるばかりだった。

そうこうするうちに、大阪線も青山町〜伊勢中川駅で運転見合せになってしまい、完全に孤立状態になった。時刻は16時近くなったが、四人のうち二人は何か考えがあってか案内所に行って今後のことを考えようとしたようだ。私と、もう一人別の友人が待合所で待ち続けることになった。自分の頭の中では最初から、名古屋線の復旧を待つか大阪に出るかの二択しか持たなかったが、この時点で明確に後者に決まった。
やっと四人揃い、今後のことについて今から宿を確保してこのまま伊勢に留まることも含めて少し議論になった。が、時刻はすでに16時30分、ここを逃したらあとはないと思って、強行に大阪へ出ることを推して進むことにした。作戦としては伊賀神戸駅までなんとか、そこから近鉄大阪線で大阪に一旦出て、新大阪から新幹線に乗ることを考えた。
今から考えれば、この大阪へ出てから帰るプランも100%成功する保証はどこにもないし、正直一か八かだった。しかしだからといって、伊勢に安全な方法で止まることがこの段階から実現できるか、実現できてもその先どう展開するかもわからないので、どちらの選択にしろ良い状態が保証されたものではない。それだったら一歩でも目的地に近づいたほうがよかろうとの思いだったし、友人たちには悪いゆえ口にはあまり出さなかったが、筆者は「最悪列車ホテルになっても構わない」と思っていた。確かに列車ホテルは叶うならあまりいたくはない。しかし、それは密室である上に狭いところに長時間同じ格好をしていることへの不快、不安の大きさからくるとも言える。エコノミー症候群やその他体調不良のリスクがないわけではないという点は確かにある。しかし、外気に触れない室内に居られるという点では、外よりも安全性は高いのだ。少なくとも、外に出られてもその先安全の確保された場所に行ける見込みがすぐになければ、むやみやたらに外に出ることは考えものだと思う。(実はこのあと宇治山田駅は私たちが出たあと夜になって冠水した。宿泊先が取れなかった場合、最悪駅にずっととどまることになる選択も全くないわけではない)

宇治山田駅から他の近鉄の駅に向かう交通手段をどうするかがまず問題だった。とりあえずタクシー、ということになるが移動しようと思う人で早い者勝ち状態になっていることは明白だった。しかしなんとも運の良いことに、友人が声をかけたタクシーが行ってくださることになった。早速皆合流して乗り込み、運転手さんに一同お詫びとお礼をする。感謝の気持ちでいっぱいだ。

どしゃぶりの雨の中を走る。伊勢自動車道に乗るが高速で走るとワイパーが役に立たないほどの雨量。しかしさすがプロのドライバーだった。当初の案ではレンタカーを借りて名古屋まで行こうという話もあり、私もそれも一理あるとは思ったもののこの大雨での運転と、道路渋滞の可能性から新幹線にいつ乗れるかという不安はあった。
松阪のインターで降りて、青山峠に向かって進む。峠道という感じでこれから帰る気が全くしないルートだ。伊賀神戸駅にようやく到着。改めて感謝の意を伝えていよいよ近鉄大阪線に乗る。
ここからは大阪上本町行きの急行に乗り、鶴橋駅で大阪環状線、大阪駅からJR京都線で新大阪に出る作戦だが、果たしてうまくいくか。いや、いくと信じるしかない。
山間部の駅を各駅に止まりながら順調に進む。荒天であることが嘘のような走りっぷり。今回ばかりは名古屋線が止まってしまったものの、近鉄はどういうわけか天災に割と強い傾向がある。
しかし安心したのもつかの間で、奈良県内に入り大阪が近づく頃状況はますます酷くなり、近鉄大阪線も沿線の土砂崩れ等で東の方から運休の区間が拡大し伊賀神戸方面もついに止まってしまった。つまり文字通りの間一髪で、あと少し遅かったらそこで足止めになっていた。
列車はなんとか走ったものの、奈良や大阪方面でも大雨による川の増水が起き始め、iPhoneにもそれを知らせる警報が流れ始めた。車内は警報の大合唱で不安が余計募る。

やっと鶴橋に到着して大阪環状線に乗り換え。とりあえず大阪都心には到達できてあと少しというところ。しかし天災の波はなおも迫ってきて、大阪駅について新大阪まで一駅移動という所でコンコースの発車案内に異変、JR京都線の運休を知らせる文字が無情にも出てしまった。
とうとうここで、、、と思いそうになるがせっかくここまできたのにという思いも。幸い、大阪〜新大阪間はJRだけでなく地下鉄御堂筋線でも移動できる。大勢の人波の中を足早に地下鉄乗り場へと移動する。御堂筋線は動いてるか、動いてた!
不謹慎だろうが、また一つゲームのステージクリアをしたような心地で新大阪に移動した。

いよいよ最後の関門は新幹線。みどりの窓口には長蛇の列だったが、なんとか列車を確保した。もともとプランで予約されて居たこともあり列車の変更というわけにはいかず改めて指定券を買い直す形だったが、乗れるだけありがたい。あまりの状況にもう細かい時間まで覚えていないが、この時点で午後9時はとうに過ぎていたことだけは覚えている。
残り少なくなった弁当を買って新幹線ホームへ。大雨のシャワーの洗礼を受けた車両ばかりでまた不安が募るが、とりあえず『のぞみ』乗ることはできた。全くシャレを言っている場合ではないが「のぞみ」がつながったことに、一同ほっと胸をなでおろす。
大雨の影響で途中大きく徐行運転したりはしたが、幸い列車ホテルとなることはなかった。東京に帰り着くことができた。よくぞまあ本当に帰ってこれたと一同驚嘆しかなかった。帰宅した時には夜中の1時を回っていた。

今回の旅行は友人の発案だったわけだが、その友人は仕事先でお客様から伊勢に行くことを提案されたことがきっかけだったという。今にして思えばこの旅行と、この経験をしたというのも何かの縁で、さすがに細かいところまで事前に予見されたとまでは言えないものの、私たちはこの旅に行くことによってある意味一つ試されたのだと思う。

旅は楽しいものだが、リスクとも隣り合わせだ。特に2017年の旅はほぼ毎回襲われることになったが、天災はどうしようもない。そう行った意味では冒険である。リスクのある状況では、どれだけの備えをしておくことができるかと、危険に遭遇した時にどんな選択をするかが問われる。今回は選択の部分も含めて非常に試された感じがするし、大いに勉強になった。あまりこんなことをいうのもと思うが、やはり人間こういった状況は人生の中で経験しないと真の成長はなかなかできないんじゃないかと思う。今回は祈りと感謝がテーマみたいなものだったが、ここであまり宗教的なことを触れてもどうかと思うからよそうとは思うものの、祈りもさることながら日頃の行いというか、特にこういった危機的状況を経験させてもらってそれに対してどう対処するかというところを見られている気がするし、(不謹慎かもしれないが)こう言った経験をさせてもらったことについても、自分は感謝したいと思う。

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smith
学生時代に旅行好きから発展(?)して鉄道好きになり、かれこれ10年以上ヒマを見つけては主に乗り鉄を楽しんでいます。
最近は車両面などの関心も強まって少しずつ撮り鉄にもなりつつあります。興味対象についてはあまり限定せずに幅広く、程よくがモットー、のつもりでおりますが本ブログでどれくらい反映出来るか、果たしてどうでしょう?(笑)まあ基本旅中心なので主に行きたいと思う所ベースに選んでます。どうぞお楽しみに!!!
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学生時代に旅行好きから発展(?)して鉄道好きになり、かれこれ10年以上ヒマを見つけては主に乗り鉄を楽しんでいます。 最近は車両面などの関心も強まって少しずつ撮り鉄にもなりつつあります。興味対象についてはあまり限定せずに幅広く、程よくがモットー、のつもりでおりますが本ブログでどれくらい反映出来るか、果たしてどうでしょう?(笑)まあ基本旅中心なので主に行きたいと思う所ベースに選んでます。どうぞお楽しみに!!!

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